上村なおか：NAOKA UEMURA
　金沢市生まれ。５歳よりバレエのレッスンを始める。お茶の水女子大学舞踊教育学科（現 芸術・表現行動学科）卒業。02年度文化庁新進芸術家国内研修制度研修員。木佐貫邦子に師事しneoの中心メンバーとして多数の木佐貫作品に出演。その後、笠井叡にダンスとオイリュトミーを師事し「青空」シリーズや「透明迷宮」等に出演。95年より自作のソロダンスを開始、これまでに長編５作を発表。ソロダンスの他に、様々なジャンルのアーティストとの恊働も多く、その意欲的な挑戦と成果に対して、第36回舞踊批評家協会新人賞を受賞。近年はグループ作品の演出や振付、笠井瑞丈との共作でも好評を博し、国内外で精力的に活動している。また、各地で行っている子供から大人までのワークショップを通じて、身体の発見と冒険を実践中。桜美林大学総合文化学群非常勤講師。現在、天使館エフェソス・オイリュトミー集中コース在学中。http://www.naoka.jp/

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笠井瑞丈×上村なおか『青空散歩』
愛知県春日井市にて開催された上村なおかと笠井瑞丈のデュオは、瑞丈が構成・振付を担当し、音楽と積極的に関わることによって、豊かなピアノの音色とダンスとが交錯した完成度の高い作品となっていた。（中略）バッハのプレリュード「ゴールドベルグ変奏曲」から始まった音楽は、ブラームス、シベリウス、シュトラウス等と移行していくが、その都度、懐かしくて切ない新たなダンスの世界が幕を開いていくようだ。音楽に寄り添った上村のダンスは詳細に亘るまで繊細、かつ振付された身体と空間を隔てる境界線がくっきりと明瞭で潔い。ここで驚くのが笠井の選曲の素晴らしさだ。ダンスの音楽は作品の質を決定するといっても過言ではない。日本の舞踊家の音楽センスには落胆することもしばしばだが、瑞丈の笠井叡ゆずりの選曲の良さは、この作品の成功にも大いに影響を与えていた。（中略）ある場面では、上村をサポートするように笠井が前に進み、また次のシーンでは男女が２人横に並んで静かに佇む。またあるときは、それぞれが自らの身体と格闘するかのように静謐かつエネルギッシュに踊り続ける。２人の関係はそのまま自分と他者との関係を照射していくように、観るもの自身の人生をも映し出してしまう。
タイトルは『青空散歩』。ちょっとだけ立ち止まり、寄り道をしながらも、前を向いて歩いてゆく。そう、それはフワフワとした青空の中。まっすぐに突き進んでいく清々しさと、たゆたうような生命の儚さ。２人はそんな存在の根源を感じさせることのできる心地よい時空間を創りだした。

唐津絵理（パフォーミングアーツ・キュレーター）
Dance Cube 2007.4月号にて全文掲載